エアバスの無人航空機「ゼファー」は、問題が発生するまで64日間飛行を続けた。
Christian Otto/Airbus
- アメリカ軍が試験を行っているエアバスの無人航空機「ゼファー」が、上空で64日間飛行を続けた後、墜落した。
- これは無人航空機では最長記録で、飛行機の過去最高記録に近い。
- エアバスは、無人航空機に「飛行キャンペーン」を終わらせる問題が発生したとInsiderに話した。
太陽光エネルギーで動く翼幅75フィートの無人航空機が、史上最長飛行記録に迫るフライトを行った後、成層圏から墜落した。
航空関連ニュースサイトのSimple Flyingが報じたように、エアバスの無人航空機「ゼファーS(Zephyr S)」が離陸から2カ月近く経った2022年8月19日、アリゾナ州に墜落した。アメリカ軍が持続的な空中センサーの実験の一環として飛行試験を行なっていたこのドローンは、高度6万フィート(約1万8200m)以上を飛行可能で、夜間に飛行を続けるためのエネルギーを太陽光パネルで充電する。
「成層圏での64日間の飛行と膨大なミッションを完了した後、ゼファーにこの飛行キャンペーンを終了する問題が発生した」と無人航空機を製造したエアバスの広報担当者はInsiderへ書面で答えた。
「担当チームは現在、このミッションで行われた1500時間以上におよぶ成層圏フライトについて分析を行っている」
同社は無人航空機に何が起きたか明らかにしなかったが、Simple Flyingによると、公開されているフライトデータでは1分あたり4500フィート(約1300m)以上のスピードで急降下していたことがわかるという。
ドローンのテストを行っていたアメリカ陸軍のAssured Positioning, Navigation, and Timing/Space Cross-Functional Teamは、ゼファーが停止した状況を調査していると発表した。
同チームのディレクターであるマイケル・モンテレオーネ(Michael Monteleone)は声明の中で、「我々のチームは、今回の予期せぬ飛行終了を受けて、重要なデータの収集と分析に励んでいる」と述べている。
「この出来事にもかかわらず、陸軍とそのパートナーは、高高度(無人航空機システム)プラットフォームの耐久性、効率、およびステーション維持能力に関する貴重なデータを得て、その知識を増やしすことができた」
声明によると、このドローンの次のテスト飛行は2023年に行われる予定だ。
今回の墜落は、アメリカ軍のユーマ・プルービング・グラウンド(Yuma Proving Grounds)があるアリゾナの上空だけではなく、中央アメリカを飛行したのちに起こっており、同機が他国のレーダーシステムの妨害だけでなく、偵察にも使える可能性を示していた。
この非武装のドローンを製造したエアバスによると、ゼファーは成層圏を飛行しながら12.4×18.6マイル(20×30km)の範囲を高解像度で監視できるので、軍用と民間用の双方への応用が期待できるという。
同社によると重量が165ポンド(約75kg)に満たないこのドローンは、ブロードバンドインターネットにアクセスできない世界の一部に高速データ通信を提供するためにも使用できるという。
このドローンは無人航空機の最長飛行記録を更新した。それまでの記録は2018年に同機種が打ち立てたもので、燃料補給を行わず上空で26日間飛行を続けた。まだ破られていない飛行機の最長飛行記録は、セスナ172スカイホーク(Cessna 172 Skyhawk)に登場した2人の男性が1958年から59年にかけて64日と22時間にわたって飛び続けたものだ。
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)