中国vs.米国の確執激化…「気球有事」が「台湾有事」の第一歩となるかもしれない、これだけの理由

ブリンケン国務長官が訪中をドタキャン

今回は、「雨降って地固まらず」という話である。「2大国」米中の確執だ。

2月5日から6日まで訪中する予定だったアントニー・ブリンケン米国務長官が、出発の数時間前に、訪中をドタキャンした。原因は、アメリカ上空に飛来した「チャイニーズ・スパイ・バルーン」、すなわち中国から飛来してきた気球問題だった。

Gettyimages

ブリンケン国務長官は北京で、カウンターパートの秦剛外相だけでなく、新たに中国外交トップとなった王毅党中央政治局委員兼党中央外事工作委員会弁公室主任兼国務委員、それに習近平主席とも会談する予定だった。日本を含むアジアは、米中のいささかでもの「和解」を期待していたが、すべては雲散霧消してしまった。

ブリンケン国務長官は3日、代わりに北京の王毅氏に、抗議の電話をかけた。国務省の発表は以下の通りだ。

〈 アントニー・ブリンケン国務長官は今日、中国共産党中央外事工作委員会弁公室の王毅主任と通話した。そして、現在アメリカ上空を飛行している中国の高度の諜報用気球の一件を考慮し、中国を訪問しないことを伝えた。今回の北京訪問は、11月にバリ島でバイデン大統領と習主席が合意したアジェンダをフォローアップするため、ブリンケン国務長官がつないできたものだった。

ブリンケン国務長官は、中国側の遺憾の声明に言及し、これは無責任な行為であり、明らかにアメリカの主権と国際法を冒すもので、中国訪問の目的を削ぐものだと伝えた。ブリンケン国務長官は、現在進行形のこの問題に照らして、いまは北京を訪問するのにふさわしい時期ではないと説明した。また、アメリカは引き続き外交的に関与し、意思疎通のラインは開いていること、条件が整えば再度、北京訪問を準備すると強調した 〉

ブリンケン国務長官本人も、よほど腹に据えかねていたのか、記者団の前に出てきて語った。

「中国が偵察用の気球を飛ばしたことは、容認できないし、無責任だ。それでも開かれた対話のラインは必要で、再び状況が整った時に訪中する」

 

米国防総省は、さらに激しく抗議した。日本時間の4日午前3時頃に開かれたパット・ライダー空軍准将の記者会見を、CNNの生中継で見たが、まるでマイクに噛みつかんばかりの形相で、怒りをぶちまけた。

「今日(3日)正午時点で、昨日モンタナ州上空にあった中国の操縦可能な諜報用気球は、高度約6万ft(約1万8300m) で、アメリカ本土の中央上空を、東方向に向かって浮かんでいる」
「下では民間航空機が飛び、軍事資産が置かれ、人々が生活しているのだ」
「現在、北米航空宇宙防衛司令部が監視を続けており、対処方法を検討しているところだ」
「気球はアメリカの領空と国際法を侵犯しており、容認できない。すでにアメリカは複数のルートで、中国の指導者にそのことを伝えている」
「気球には、監視装置とデータ装置が搭載されている」
「現時点で撃墜しない理由は、人や航空機に脅威を与えるだけでなく、この大きな気球の爆発から生じる残骸が、地上の人々に有害であり、物的損害をもたらす可能性があるためだ」
「気球は今後数日間、アメリカ上空を飛行し続ける可能性が高い。必要に応じて最新情報を提供していく」
「気球が発見された時点から、機密情報が収集されるのを防ぐため、直ちに行動を取った」

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら

関連記事