【元空自幹部も称賛】米軍による中国偵察気球撃墜は「新幹線で自転車を追うような超難度ミッション」だった

先月28日に米国アラスカ州方面から飛来し、カナダを経て米国本土の上空を横断した中国のものと見られる偵察気球は、大西洋上に出たところで米軍戦闘機により撃墜された。

バイデン米大統領は、米本土上空を通過している時点で「撃墜」を指示していたが、米国防総省による「撃墜により地上に及ぶ被害のリスクと、米本土を通過するまで監視・追尾のみにとどめた場合の秘密保全上のリスクを天秤にかけた結果、撃墜によるリスクが勝る」との被害見積もりに基づき、オースティン国防長官の助言を受けて「米国民の生命への危険がなくなり次第、速やかに撃ち落とす」ことに方針を転換した。

実行に移された偵察気球撃墜作戦

米本土を通過したこの気球は、現地時間2月4日14時39分、バージニア州・ラングレー基地・第1戦闘航空団所属の戦闘機F-22「ラプター」によって撃墜され、気球に吊り下げられていた装備品は、サウスカロライナ州の沖合6マイル(約11km)、水深47フィート(約14m)の地点に落下した。

公開された映像を見ると、F-22から発射された1発の空対空ミサイルが気球本体に命中し、気球は破裂し落下していった。

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それにしても、さすが米軍と感嘆させられるミッション(作戦)である。

当初、米本土領空を通過している段階で、バイデン大統領から撃墜を指示された米空軍は、海軍と連携して即座に本ミッションの計画に着手したのであろう。

まず、空軍はレーダで本気球を追尾することによって、大西洋上に到達する時間とその位置を割り出す一方で、海軍は落下物の回収を考慮してその付近の領海内で民間の船舶が少なく海面の浅い海域を選定することによって、作戦実施海空域(要撃エリア)を決定したのであろう。その上で、空軍は作戦実行部隊(発進基地)、戦闘機の機種(第5世代機)、操縦者(おそらく2機編隊)、予備機その他の作戦支援機を選定・待機させ、海軍は洋上における警戒監視や警備及び落下物回収のための支援艦艇を選定・派遣したものと思われる。

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