新しいプロパガンダ? 北朝鮮の11歳の少女はYouTubeで『ハリー・ポッター』や娯楽施設について語る

ユーチューバー

『ハリー・ポッターと賢者の石』の本を手にしゃべるユーチューバーの「Song A」。

Screenshot/YouTube/Sally Parks [송아 SongA Channel]

  • 北朝鮮のユーチューバー「Song A」(11)は平壌ののどかな暮らしを紹介する動画を投稿している。
  • 少女は『ハリー・ポッター』を読み、親水公園へ遊びに行き、親友とスイーツを食べるなどして暮らしていると言う。
  • 登録者数2万1000人の少女のチャンネルについて、専門家は北朝鮮のプロパガンダの一環だろうと話している。

11歳のユーチューバー「Song A」によると、北朝鮮は子どもにお薦めの場所だという。

「平壌に来たことはありますか? ここへ来れば、きっと驚くでしょうね」と少女は軽快にイギリス風の英語で語りかける

「文字通りどこへ行っても紋繍遊泳場や中央動物園、ローラースケート場といったアミューズメントパークがあるからです」

「子どもたちが楽しめる場所が数えきれないほどあります」

5年生を終えたばかりだというSong Aは、ユーチューブ(YouTube)に北朝鮮の日常生活を紹介する動画を投稿し始めてから9カ月で約2万1000人のチャンネル登録者を獲得している。

少女のチャンネルは2022年に入ってから出現した複数の北朝鮮のユーチューブアカウントの1つで、研究者らは北朝鮮の"厳しく規制された国"というイメージを払拭し、"模範的な社会"というイメージに変えるプロパガンダの一環だろうと話しているとCNNが最初に報じた

北朝鮮の他のユーチューバーらはアイスキャンディーを食べたり釣りに行ったりジムへ行ったり食料品の買い物に行く動画を上げている。

Song Aはプールへ遊びに行ったり、ロッククライミングに挑戦したり、親友とかき氷を食べたり、親戚からダンスを教わる様子を撮影した動画を全て英語で投稿している。

Song Aは英語を母親から教わり、習得したと説明している。

「母はわたしに幼い頃から英語を教えてくれました。母のおかげで英語を話し始めてから50以上の英単語を覚えました」

お気に入りの本は『ハリー・ポッターと賢者の石』だと紹介し、表紙に中国語で「ハリー・ポッター」と書かれた本を手にしていた。

平壌にある「科学技術殿堂」を訪れた際は、恐竜や海中のサンゴ礁が出てくる4Dの短編映画を観るなどしていた。

Song A

ここ9カ月で12本の動画を投稿している。

Screenshot/YouTube/Sally Parks [송아 SongA Channel]

Song Aの動画には脚本があるか、少なくとも何らかの手が加えられている"サイン"がある。誰かの指示を求めるように視線がカメラから外れることも多く、そのしゃべり方は台詞を暗唱しているようだ。

複数の動画で、少女が自撮り棒に取り付けた携帯電話に向かってしゃべっている姿が映し出されていることから、現場にはもう1つカメラがあることも分かる。

Song Aのチャンネルを含め、北朝鮮のユーチューブチャンネルはプロパガンダの手法をより「巧妙」にせよとの金正恩朝鮮労働党総書記の圧力によるものだろうと、韓国にある東国大学北朝鮮学研究所のハ・スンヒ研究教授はCNNに語っている。

「これまでのプロパガンダの形を脱却し、新しい形のプロパガンダを実施しようとの話し合いがあった」

北朝鮮のユーチューブ動画には、実在するアミューズメントパークやコーヒーショップ、4D映画館が登場するものの、それは北朝鮮の人々の一般的な暮らしからはかけ離れたものだと専門家らは指摘している。北朝鮮でインターネットにアクセスできるのはごく一部の限られた人々のみで、ましてや動画を撮影したり、動画をユーチューブに投稿するのに必要なツールはまず手に入らない。

韓国のNGO、北韓人権情報センター(NKDB)の研究者パク・ソンチョル氏は、北朝鮮のユーチューブチャンネルが誇示する施設は「特別な階級の特別な人々」だけがアクセスできるものだと話しているとCNNは伝えた。

InsiderはSong Aのチャンネルと連絡を取ることはできなかった。ユーチューブにもコメントを求めたが、回答は得られなかった。

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