中国・習近平総書記の政権運営はうまくいっているのか。評論家の宮崎正弘さんは「不動産バブルが崩壊し、借金を返済するために新たな借金をつくろうとしている。景気が後退し、富裕層や若者の間では海外に脱出する動きが広がっている」という――。

※本稿は、宮崎正弘『ステルス・ドラゴンの正体 習近平、世界制覇の野望』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

「中国・中央アジアサミット」の記者発表に臨む習近平国家主席=2023年5月19日
写真=EPA/時事通信フォト
「中国・中央アジアサミット」の記者発表に臨む習近平国家主席=2023年5月19日

直属の部下が「習近平は裸の皇帝である」

2022年10月の「フォーリン・アフェアーズ」に蔡霞さいかの論文「習近平の弱点 狂妄とパラノイアはいかに中国の未来を脅かすか」が掲載された。

これは各界に衝撃を運んだ。世界の指導者、外交官、国際政治学者、メディアの外報部などが必ず読む、権威ある雑誌に露骨な習近平批判が発表されたからだ。なにしろ蔡霞はかつて習近平直属の部下だった。その彼女が目撃し体験した事実をもとに習近平がいかにつまらない人物かを書いた。

「習近平は『裸の皇帝』である」(周囲の佞臣らは習が気に入る情報しか伝えない)。

「この指導者は虚栄心に満ち、頑固で独裁的だ」(知識人への極度のコンプレックスがあり、先端企業を虐め、ビジネスの英雄らを辱める性向が強い。このため中国は悪性のスパイラルに陥る)。

「中国共産党はマフィア組織」(反腐敗といって閣僚級400名近くと官吏63万人を更迭した。だが腐敗の権化と言われた賈慶林かけいりんだけは外されるという依怙贔屓が目立った。彼は厦門密輸事件の黒幕だった)。

総書記就任に絶句、「彼はIQが低い」

蔡霞・元教授は人民解放軍の幹部の子女(紅二代)。体制内の政治理論学者として江沢民政権時代には「三つの代表」の情宣に協力した。習近平が校長だった党の高級幹部養成機関・中央党校の教授として習近平の直属の部下だった(2012年に定年退職)。

米国へ亡命しても中国共産党の迫害が絶えず、それでもこのままでは中国は没落する危険が高いとして筆を執った。習が総書記になったとき「えっ、あんなのが!」と絶句し、「彼はIQが低い」と呻いた。