2023.06.09
# 介護 # 健康寿命

整形外科医、リハビリ専門医が絶賛! 「埼玉医大式」介助技術にこめられた「腰を守る工夫」

埼玉医大式「力がいらない介助技術」がすごかった(1)後編

日本初! 大学病院が有効性を認めて取り入れた身体介助の技術を、多数の写真と動画でわかりやすく解説したのが、書籍『写真と動画でわかる! 埼玉医大式 力がいらない介助技術大全』だ。

埼玉医科大学が学生の授業に取り入れ、看護師だけでなく教授にも学んでもらい、さらに患者への退院指導にも取り入れている「力がいらない」「腰にやさしい」「感染リスクが抑えられる」新しいケアの技術をピックアップして紹介する。今回は、院内研修で実地にメソッドを学んだ専門医の評価を聞いてみよう。
前編記事:
これで腰痛とはおさらば! 腰にやさしく楽にできる介護「5つのポイント」

腰を守る確かな工夫がある身体介助の技術
鳥尾哲矢( 埼玉医科大学病院 整形外科・脊椎外科教授)

●なぜ介助で腰を痛めるのか

介助のなかでもとくに腰痛が起こりやすいのは、入浴介助と移乗介助です。これらはいずれも、「前屈位で、少し離れたところにあるものを持ち上げる動作」、つまり腰を曲げ、前屈みで利用者の体を持ち上げる「腰を支点とした動作」です。

前屈み姿勢が続くと、椎間板脊柱起立筋、大殿筋などに大きな負担がかかります。くり返しの負担により組織が傷ついて炎症が起こり、痛み(侵害受容性疼痛)が生じます。

一般に「ぎっくり腰」と呼ばれる急性腰痛の多くは、そのような原因で起こっています。また、前屈みになると、椎間板内部にかかる圧力(椎間板内圧)が上がることがわかっています。椎間板内圧は、立っているだけならそれほど高くないのですが、前屈みになると上がり、その姿勢のまま持ち上げる動作をすると、さらに上がります。

前屈みの持ち上げ動作により、椎間板のなかの「髄核」と呼ばれる柔らかい軟骨組織が押しつぶされて後方に膨らみ、神経を圧迫します。この神経への刺激も痛み(神経障害性疼痛)を起こし、腰だけでなく臀部にまで広がっていくこともあります。

『写真と動画でわかる! 埼玉医大式 力がいらない介助技術大全』より