2024.04.28

ゴールドマンサックス元社員が暴露…エリートサラリーマンたちの凄まじい「ズルさ」と「選民意識」

世界トップクラスの地位と報酬が約束されたゴールドマン・サックス。だがその実態は、金と女性に対するおそるべき強欲、嫉妬にまみれた職場だった――。

同社の元マネージング・ディレクター(上位8%の幹部職)の女性が1998~2016年の在職期間に目撃した、ミソジニー(女性嫌悪)と人種差別にあふれる、堕ちた企業風土を明らかにする衝撃の暴露本『ゴールドマン・サックスに洗脳された私』から、一部内容を抜粋してお届けする。

巨額の退職金を捨てて、秘密保持契約書(NDA)へのサインを拒否。同社の内幕を告発する道を選んだ彼女の回顧録を読み進めるうちに明らかになる、金融資本主義の欺瞞と、その背後にある差別的な思考とは?

 

空売りをさせつづける

ヘッジファンドに空売りをさせたあと、空売りをさせつづけるのが私の仕事のひとつだ。つまり、ヘッジファンドが空売りしたがっている株は必ず借りてこなくてはならない。見返りとして、ヘッジファンドからその取引の市場価値に応じた手数料を受けとる。手に入れるのが難しい株であればあるほど手数料も高くなる。どれほど高い手数料であろうと顧客は払ってくれるだろう。空売り手数料の市場というものはなく、株価のように相場を参照することはできない。最初の取引のときにブローカーが手数料を提示するが、その値は日々変わる。

私はヘッジファンドから受けとる手数料をチェックし、必要に応じて調整しなくてはならなかった。市場価格が最も高い株の空売りには、マイクも関わってきた。手数料の増減が、会社の利益に大きな影響を与えるからだ。

手数料を上げろ!

「この手数料を200ベーシスポイント上げろ」ある日の午後、空売りのレポートを読んでいたマイクが私に指示を出した。レポートには最大手のヘッジファンドが空売りしている株の銘柄が書かれている。彼はいくつかの株に赤い丸印をつけたレポートを、私に投げてよこした。ほとんどの株には、すでに2桁の手数料を設定してあったが――20パーセントや30パーセント――あと2パーセント上げろというのだ。

「ですが、つい最近、値上げしたばかりです」私は言った。別に違法ではないが、やり過ぎだと思った。これらの株から得られるスプレッドはすでにじゅうぶん高額だし、前の日に手数料を変更したばかりだ。高い手数料を設定しているのはうちだけではなく、ウォール街全体がそうだった。

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