カールとミンディのジェンセン夫妻。ニューヨークのウォール街の雄牛の前で。
Carl and Mindy Jensen
カール・ジェンセン(Carl Jensen)さんは60歳代で退職しようと考え、計画を立てていた。
その後、40歳代の初め頃に『Get Rich Slowly』や『Mr. Money Mustache』といったブログを通じて「経済的自立、早期退職(FIRE)」のコミュニティを知った。
そこには別の道があった。平均的な退職年齢よりも数十年早く企業の世界を去ることも含まれていて、カールさんは惹きつけられた。
カールさんは2013年、43歳の時に100万ドル(約1億5500万円、1ドル=155円換算)のポートフォリオを構築して1500日後に退職するという目標を立てた。そして、自分自身と妻のミンディ(Mindy)さんのFIREへの旅を記録するブログ『1500 Days to Freedom(自由までの1500日)』を開始した。
ジェンセン夫妻は2013年に完全にゼロから始めたわけではない。2人はお金に関して賢明だった。カールさんは毎年401(k)(確定拠出年金制度の1つ)を上限まで利用していたし、夫婦で住宅の転売をして稼いでいた。当時は、保有していた個別株と年金口座を合わせて50万ドルほどを投資していたという。
だが、具体的な早期退職の目標を念頭に置き、2人は投資戦略を見直した。すると、結果が出始めた。2016年に投資額が初めて7桁ドルを超えたという。
2017年4月、カールさんはソフトウェアエンジニアの仕事を退職した。
カールさんと、現在はポッドキャスト「BiggerPockets」の司会者としてパートタイムで働いているミンディさんは、夫婦の投資ポートフォリオを2013年の58万6000ドル(約9080万円)から、2024年には460万ドル(約7億1300万円)まで増やした。彼らの投資口座の明細を写したスクリーンショットをBusiness Insiderが確認したところ、現在の夫妻の総資産は、投資と主たる住居を含めて500万ドル(約7億7500万円)を少し上回っている。
コロラド州ロングモントに住む現在50歳代前半のジェンセン夫妻は、現在の投資ポートフォリオについてBusiness Insiderに説明し、この11年間で戦略をどのように進化させてきたか説明してくれた。
個別株について
ジェンセン夫妻はおよそ200万ドル(約3億1000万円)を個別株に投資している。2人が保有しているのは、主にテスラ(Tesla)やメタ(Meta)、アマゾン(Amazon)、グーグル(Google)などのIT株で、2010年代初頭に購入したものだ。その頃はまだFIREへの旅を始めておらず、株の銘柄選び以外にもお金を投資する方法があること知らなかった。2人はブログで、保有する株と投資信託をすべて公開している。
彼らのポートフォリオの大部分(約42%)を占めるのは個別株だが、これは現在の投資戦略や投資哲学を反映したものではない。2人が現在中心に置いているのは、インデックスファンドだ。
「私たちが個別株を保有しているからといって、それが資産を増やすための素晴らしい方法だと思ってほしくありません。なぜなら、投資した株の価値がゼロになってしまうことも十分あり得るのですから」とミンディさんは言う。
でも、カールがとてもよくリサーチしてくれたおかげで、ほとんどの場合、個別株については非常にうまくいきました。カールはIT業界で働いていたから、それらの企業のことを知っていたし、その使命やビジョンを信じていたのです。
インデックスファンドとETFについて
夫妻のポートフォリオの約20%は、バンガード500インデックスファンド・アドミラル・シェアーズ・ファンド(VFIAX)、バンガード情報技術インデックスファンドETF(VGT)、フィデリティMSCI情報技術インデックスETF(FTEC)などのインデックスファンドだ。
インデックスファンド投資は、「私たち自身も含め、ほとんどすべての人にとって正しい答えです」とカールさんは言う。本質的に分散されていて、コストが安いことが多いこのタイプのファンドへの投資をもっと早くに始めていてもよかったが、2人はFIREムーブメントに出会うまで、インデックスファンドのことを知らなかった。
私たちはすべてのことをゆっくりと方向転換しています。今の段階では、新しい資金のほぼすべてをインデックスファンドに向けています。
不動産について
ジェンセン夫妻はさまざまな不動産投資戦略を試してきた。2人は現在、8度目の「リブ・イン・フリップ(live-in flip)」を終えつつあるところだ。リブ・イン・フリップは、購入した家に住みながら修繕を施した後、売却するものだ。
この方法により、物件の転売に伴うリスクを部分的に排除することができる。
「この戦略の素晴らしい点は、誰にでも住む場所が必要ということです」とカールさんは説明する。
別に家を買って、その家をできる限り早く転売しなければならないとすれば、はるかにリスクの高い状況になります。なぜなら、その家にただ金を注ぎ込んでいるだけだから。それに対して私たちの場合は、自分たちが住んでいる家のローンを払っているだけで、その家がたまたま工事現場になっているのです。
ただし、それはそれで大きな犠牲を払っていることになるという。
これはかなり乱暴な暮らし方です。
ジェンセン夫妻はこれまでに7回の「リブ・イン・フリップ」を行った。
Carl Jensen
夫妻は住宅の転売からは離れつつある。
「私たちは常に不動産市場に注目してきました」とミンディさんは話した。彼女は不動産エージェントでもあり、MLS(業者用の不動産情報システム)にアクセスすることができる。
私はいつも、次の有望な物件に目を光らせています。でも、もうリブ・イン・フリップをする計画はありません。なぜなら、私たちは年を取りつつあり、それはたいへんな仕事だからです。
夫妻はプライベートレンディング(個人貸付)を増やし始めている。貸付は住宅の転売よりもはるかに受動的で、約12%の利益が得られる。
「プライベートレンディングの収益はそれくらい良いので、『簡単にお金を稼ぐなんていやだ。またリブ・イン・フリップをやろう』というふうにはなかなかなりません」とミンディさんは言う。
私たちの経済状況が、リブ・イン・フリップを始めた頃とはまったく違うのも確かです。お金よりも時間に余裕があり、リブ・イン・フリップでも稼げる可能性があるなら、自分の家を投資対象に変えるのはとても良いやり方かもしれません。
ジェンセン夫妻はシンジケーション取引も行っている。この取引では、投資家グループが共同出資して1つの物件を購入し、シンジケーターが物件を管理する。
これは完全に受動的な投資だ。物件の購入に必要な資金の一部を提供するだけなのだから。だが、どれくらいの収益になるか分かりにくいとカールさんは言う。
すべてのシンジケーション取引で私が気づいたのは、シンジケーションの運営者は数字を予想していると言うでしょうが、その数字が正確なことはめったにないということです。
とはいえ、「私たちが投資してきたシンジケーションは、実際にどれも当初の予想を上回る成績でした」と、カールさんは付け加えた。
でも、インデックスファンドを上回ったものは1つもありません。
夫妻は現在、2つのシンジケーション取引を行っている。シンジケーション取引は一般的に2〜10年の期間で行うものだが、ジェンセン夫妻の場合、平均して3年ほどだった。2人は売り込みの資料が届けば進んで読むが、「現在の金利環境を考えれば、今のところシンジケーションへさらに投資することは検討していない」とミンディさんは話す。
不動産投資は夫妻のポートフォリオの約32%を構成し、それとは別に主たる住居の資産価値が8%を占めている。
現金およびその他の投資について
夫妻は少額を現金で保有している。3000ドル(約46万5000円)ほどだ。また、友人の1人が所有する地元の蒸留場にも投資していた。
ジェンセン夫妻は、投資は完全に個人的なものだと考えており、通常はJ・L・コリンズ(J.L. Collins)の著書『The Simple Path to Wealth』を投資の基本の入門書として推奨している。
コロラド州在住のジェンセン家。
Courtesy of Carl and Mindy Jensen
投資の一般的なアドバイスとして、カールさんは「完全に受動的な投資がしたいなら、インデックスファンドに投資するべきです」と話した。
しかし、もし労力を費やす気があるなら、不動産の方がより多く稼げる可能性がある。
市場について学んだり、戦略をじっくりと練ったりする時間がない人には、不動産は最適な投資対象ではないかもしれないという。
「不動産投資を成功させるには、多くの知識が必要です。いつも長期の賃貸物件に投資している人たちに会ったことがありますが、そういう人はキャッシュフローがほとんどありません。彼らがインデックスファンドに投資していれば、もっとはるかにうまくいって、頭痛も減っただろうに、と思います」カールさんは話している。
だから、私の考えとしては、最初の選択肢はインデックスファンドです。でも、もっと直接的に関わることを望み、時間を費やすことを厭わず、時間もあるのであれば、おそらくは不動産が良いでしょう。